
7月27日「TEAM EXPOパビリオン」 ステージイベント「日本文化の継承と魅力発信―古文書から読み解く歴史―」を開催!
2025.08.22 現地レポート
2025年7月27日(日)大阪・関西万博会場内の「TEAM EXPOパビリオン」ステージにて、「日本文化の継承と魅力発信―古文書から読み解く歴史―」が開催されました。
イベントでは、2024年12月にユネスコ無形文化遺産に登録された「伝統的酒造り」を切り口に、過去の歴史的資料から現代にどのように技術や文化が伝承されてきたのかを読み解き、TOPPANの古文書解読技術であるくずし字AI-OCRの活用例を交え、未来にどう繋いでいくのかをTOPPAN社員がゲスト共に様々な角度から探っていきました。
第一部:古文書がつなぐ過去(江戸時代)と現代

●古文書から読み解く歴史(TOPPAN株式会社 福井尚子氏)
福井氏からは、これまでTOPPANが「TEAM EXPO 2025」プログラムとして行ってきたイベントや、歴史資料の価値を現代に繋ぐTOPPANの先進的な取り組みが紹介されました。そして、各分野の第一線で活躍する3名のゲストが、それぞれの視点から古文書の魅力と可能性を語りました。

●古文書×AI「伝統的酒造り」の過去・現在・未来(小西酒造株式会社 代表取締役社長 小西新右衛門氏)
小西氏より、ユネスコ無形文化遺産に登録された「伝統的酒造り」の文化的価値について熱弁。自社に残る古文書を元に300年以上前の江戸時代の酒を復元した驚きのエピソードを披露し、「古文書は単なる記録ではなく、未来の酒造りへのヒントが詰まった宝の山。AIの活用で、その価値をさらに引き出せる」と、伝統と革新の融合への期待を語りました。

●近世初期細川家の記録に見る酒とその役割(熊本大学 永青文庫研究センター教授 稲葉継陽氏)
続いて、熊本大学の稲葉氏が登壇。膨大な「細川家文書」の中から、お酒にまつわる記録を読み解き、当時の武家社会における酒の意外な役割を解説しました。「奉行所の日々の記録には、贈答品や儀式で使われる酒の詳細が記されており、そこから当時の社会構造や人間関係まで見えてくる」と、古文書が持つ一次情報としての価値を強調しました。

●商都大阪・堂島米市場に見る江戸時代の「先物取引」(神戸大学准教授 高槻泰郎氏)
第一部の最後は、神戸大学の高槻氏。「ここ大阪で、世界初と言われる米の先物取引が行われていた」という興味深い話から始まり、当時の取引の仕組みを古文書や版本を元に紹介。「米の価格変動を予測し、リスクヘッジを行うという考え方は、現代の金融システムに直結している」と述べ、江戸時代の経済がいかに先進的であったかを解き明かしました。
第二部:AIがつなぐ古文書の未来
第二部では、第一部で登壇した4名が再び登壇し、AIがつなぐ古文書の未来をテーマにクロストークを展開しました。
稲葉氏、高槻氏からは「歴史研究が飛躍的に進むだけでなく、一般の人が自分のルーツや地域の歴史を自ら発見できるようになるかもしれない」と学術面・市民参加の面での可能性が示されました。小西氏は「各地の酒蔵や旧家に眠る未知の記録から、新たな酒造りの技術や物語が生まれるかもしれない」と、産業への波及効果に言及しました。さらに議論は「古文書を未来に残す意義」へと深化。災害による消失リスクや、解読できる人の減少という課題に対し、「AIによるデジタル化と解読支援は、文化のバトンを未来へつなぐための強力な武器になる」という点で意見が一致。古文書という過去の遺産が、AIという未来の技術と結びつくことで、その価値が何倍にも増幅されるという、希望に満ちたビジョンが共有されました。

登壇者からのメッセージ
イベントの最後に、ご登壇いただいた皆様から感想をいただきました。
小西 新右衛門 氏(小西酒造株式会社 代表取締役社長)
「稲葉先生のお話から1600年代初頭から 日本各地で酒造りが行われていたことが 古文書に記されていること、高槻先生から 江戸時代から米相場は現物と関係無いところ で動いていたこと等非常に新鮮な情報を 古文書解読から教えていただいたのは 今後の古文書カメラの可能性を更に感じさせて いただきました。ありがとうございました。」
稲葉 継陽 氏(熊本大学 永青文庫研究センター教授)
「歴史資料との長年の対話によって培われてきた専門家の解読技術と、最新のAI-OCR技術とが融合して、誰もが古文書に親しむことができるようになる。素晴らしいことです。歴史上の多くの先人たちが大切にしてきた価値観を本物の古文書から吸収したうえで、未来に向けて判断することができるようになります。そういう意味で、歴史と未来を市民がつなげることができるかもしれません。」
高槻 泰郎 氏(神戸大学准教授)
「日本の歴史において、日本酒というものは、単なる嗜好品としてではなく、贈答も含む儀礼上のアイテムとしても重要な意味を持っていたことがよく分かりました。江戸時代の経済を研究する上で、重要なヒントを頂いたと思います。これからも日本人にとって、お酒、お米が持った意味について、研究して参りたいと思います。」
福井 尚子 氏(TOPPAN株式会社)
「「TEAM EXPO 2025」プログラムの一環である「日本文化の継承と魅力発信—古文書から読み解く歴史—」イベントが盛況のうちに終了いたしました 。これまで多大なご協力をいただいたゲストの皆様、参加いただいた皆様へ心より感謝申し上げます。本イベントを通じて、古文書の持つ価値や可能性、そして面白さが少しでもお伝えできていれば幸いです。」
今回のイベントは、古文書が決して現在と関係のない古びた記録ではなく、現代そして未来を豊かにする知恵の宝庫であることを改めて教えてくれました。そして、AIというテクノロジーが、専門家だけのものであったその扉を、広く一般に開こうとしています。
本イベントを通じて、一般の方々に歴史資料をより身近に感じていただき、 災害などによる資料の喪失を防ぐ意識の醸成に繋がることを目指すとともに、AIを活用することで、現代の私たちが読めなくなった全国の歴史資料を利活用する未来を実現していきたいと考えています。
TOPPANは今後も、歴史資料を未来に繋げる新たな価値創造に貢献できる活動を推進してまいります。
